本日はどちらかというと教育業に携わる若手の教師、講師向けです。特に4月より新卒として社会人の仲間入りを果たした方の中には、集団授業を行う上での悩みにそろそろぶつかる頃かと思います。いわゆる板書や説明の組み立て、トーン、抑揚などのスキル面に関してはどうしても経験と時間が必要です。しかしそれ以上に悩んでいる方が多いのが、集団をまとめ、静かに集中して授業を聞かせるという、クラスコントロールではないでしょうか。
昔と今の違い
時の流れとともに指導内容や入試問題の難易度や傾向はどんどん変わっています。10年前の知識で指導方法が何も変わらないままでは対応できません。当然教師も絶えず変化し、スキルをブラッシュアップしていく必要があります。しかしそれだけでなく、子どもたちへの接し方や指導方法も昔と同じ考え方は通用しない時代になっています。昭和的な考えで言えば、昔は怠惰な生徒や、やや集中して授業を受けている生徒の妨げになるような生徒がいれば、ガツンと一喝すればそれだけで治まる時代もありました。こんな怒り方をすれば子どもたちが離れていってしまうのではないか、親からクレームが来ないか、など、私も社会人1~2年目くらいまではそのような悩みと不安がありました。しかし当時の先輩に相談すると、そういったことにビビる必要はない。言っていることが正しいのであれば自信を持ってぶつかれば良い、と助言をもらいました。先輩の言うとおりで、その指導方法は概ね成功していました。大きな問題になることはなく、むしろそれによって何人かの子どもたちとは信頼関係がより強固になったと感じるほどでした。しかし今はその風潮が崩れつつあります。現代の子どもたちは昔のような厳しさに対する耐性がありません。一歩間違うと大問題になります。ビビる必要はない時代から、少しビビらなければならない時代に変わりつつあります。
言うことを聞いてくれない子どもたち
小中学生の子どもたちは、私たち大人が思っている以上に色んなことをよく見ています。そういう意味では大人と子ども、教師と生徒という関係性をいったん頭から切り離し、一人間として、対等な人間として視座を下ろすことも重要です。そして先述通り大人をよく見ているので、この先生の前ではきちんとしていないとまずい、反対にこの先生は多少だらけても平気、など、人によって判断します。特に若手の教師は授業を成立させることに必死なので、躾にまで目を向ける余裕はありません。そしてこのような隙を子どもたちは見逃しません。結果として、何人かの授業に集中しない生徒、言葉を選ばず言えば、私語などを行い、収拾がつかなくなってしまう原因を作る生徒を生み出してしまう可能性が高まります。この手の生徒は優しく注意する程度では効きません。そしてそのような状況が続くと、教師はますます自信をなくし、悩みが増幅します。私も初年度はそれでかなり悩みました。特定のクラスの生徒たちだけ明らかに自分のことを下に見ていることが分かりました。注意の方法も、クラスをコントロールするノウハウも持っていなかった当時は、そのクラスの授業を行うというだけで憂鬱な気持ちになっていました。色んな書籍に目を通し、先輩にもたくさん相談しました。今思えば、一番効果的だったのはやはり先輩に相談し、いただいた助言の数々です。良書よりも、身近な現場で活躍している先輩の声が一番の成長の糧だったと思いますし、そのいくつかが今の自分の土台になっています。厳しく叱責するだけで治まっていた時期があると話しました。それは本当に教師にとっては楽な方法ですが、それは昔も今も、模範的な指導ではありません。見方を変えれば恐怖によって子どもを抑えつけているだけに過ぎないからです。今はそのような指導は御法度ですし、本質的な部分を言えば、叱責することなく子どもたちを正しく導くことこそが、一流教師に近づくキーワードです。
クラスをコントロールするには?
では実際にクラスをコントロールするにはどうすれば良いかについて説明します。大切なことはたった一点。それは「ルールを作る」ということです。僕は以下のようなルールを作り、受け持つクラスの最初の授業の冒頭で必ずこれを提示します。
- 先生が話を始めたら必ず口を閉じて前を向く
- 忘れ物があれば、必ず授業が始まる前に教師に言う
- 授業中は私語をしない、物の貸し借りをしない
- 上記を守れない場合、2回までは許容する。ただし3回目があれば厳しく指導する
- 一緒に頑張る仲間を傷つけるようなことはしない。これに関しては見つけ次第容赦なく指導する。
このような感じです。特にこの中で重要なのは後半の2つです。何をすれば先生は叱るのか、という基準を明確にしている点です。子どもたちにとってストレスなのは、叱るタイミングがもぐらたたき式で、何をすれば叱られるのか、という基準が曖昧な場合です。このようにぼんやりした基準でいると、子どもたちはいつどこで怒られるか分からないという不安を持つこともありますし、何より気分でこの先生は怒っているのでは?と思うこともあります。叱る基準をあらかじめ明確にしておけば、叱責があったとしても子どもたちは納得します。同じ叱責でも、信頼される教師と信頼されない教師の差はこの点にあります。ルールや約束をきちんと明示しておき、それが破られた時にどうなるのか、ということまで言及しておけば、もぐらたたき式の状態になることはありません。
私語をやめない生徒はいる時の対処方法
そうは言ってもおそらくクラスコントロールで一番の悩みは、授業中に私語をやめない生徒がいる、ということではないでしょうか。この手の生徒は注意喚起くらいではやめない可能性が高いです。お奨めの方法を伝授します。それは、「その生徒が私語やめるまでその生徒を見続け、その間教師は黙って授業を中断する」です。私語をやめない生徒が一人でもいる限り、授業や説明を続けてはいけません。これをやれば、自分のせいで授業が進まないということに該当の生徒は気づきます。また、周りもそれに気づき、該当生徒に注意を促してくれます。そしてその際に一言、「全員が私語をやめて授業を聞く姿勢が作れていない時は、説明を中断します」などと添えておけば完璧です。注意して正すのではなく、雰囲気と様子で子どもたちに「気づかせる」という点でも非常に効果が高い指導方法です。当然厳しく叱責するわけでも怒鳴るわけでもないので、クレームなどに発展することはありません。指導のテクニックとして、ぜひとも取り入れてみてはいかがでしょうか。
一番は子どもとの信頼関係
もちろんこれまで述べたようなテクニックも大切ですが、それ以上に大切なのは、やはり子どもたちとの信頼関係です。逆にこれは若手の先生だからこそ中年の先生には敵わない大きな利点と考えています。子どもたちは基本的に若い先生が好きです笑変な意味ではなく、年が近いと親近感も湧くのでしょう。実際私もそうでした。正直ベテランの今より、20代の時の方が子どもからの人気は高かったように思います笑とにかく子どもたちが出向くタイミングは必ず立ち番に出て、挨拶はもちろん声をかけてあげて下さい。「今日も頑張ろうな」「小テスト期待しているよ」「前回の宿題よくがんばってたな」など、こういった些細な言葉が子どもたちにとっては本当にうれしいものです。このような積み重ねで子どもたちとの信頼関係を強くしていけば、自然に授業時の雰囲気はよくなります。子どもたちも好きな先生を悲しませたくないと考えるので、自然と授業中の態度が悪い生徒も是正されていきます。そうなると教師側も授業がより楽しくなり、より活気が生まれる授業となります。大変なことも多いとは思いますが、ぜひ一つでも実践し、授業力向上を目指して頑張っていきましょう!
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